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ふれあいネットワーク 社会福祉法人 全国社会福祉協議会

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分野別の取り組み

子どもの福祉

てんこもりな活動を人とのつながりで紡ぐ「てんこもりのわ」
(てんこもりのわ:多世代交流の場/神奈川県)

取材時期:2023年6月
取材者:幼保連携型認定こども園 明照保育園 中島 章裕 園長
(全社協・児童福祉施設等による地域の子ども・子育て家庭支援体制の構築に関する検討委員会 委員)

神奈川県横浜市神奈川区松見町で築50年の戸建てを拠点に多世代交流の場を創出する「てんこもりのわ」は7年前に開設し、子どもから高齢者まで、世代を問わずどなたでも利用できる集いの場です。

その始まりは、近所で子育てを行う家庭の支援から始まったそうです。その後、近隣の住民にお茶飲み場として開放。次第に松見町に住む親子や高齢者が集まり、現在はスタッフ10人で週2回、多世代が集う地域の居場所として運営しています。その成り立ちから『実家のような安心感』を大切にしているそうです。

また、学校に行くことができない子や家庭の事情で居場所がない子など、さまざまな事情がある子どもたちの受け入れにも積極的に関わっています。

子どもの見守りや高齢者の居場所としても活動してきましたが、その活動内容は、子育て支援から講演会や相談会、時にはフリーマーケットや赤ちゃん撮影会と多岐にわたります。先日行った落語会は大盛況だったそうです。夏には、スイカ割りと芸人ライブも行う予定とか。

3枚の写真:室内のワンルームで、おもちゃで遊ぶ3、4人の乳幼児と、大人たち

3枚の写真の2枚目:1枚目とは異なる人たち

3枚の写真の3枚目:1、2枚目とは異なる人たち

まさに「てんこもりのわ」という名前にふさわしい「何でもあり!のてんこもり」な集いの場を運営しているのが、代表の加山さん。生まれも育ちも松見町。3人の子どもに恵まれ、長女が小学生の時にPTAの参加をきっかけに地域活動に携わるようになり、その後に主任児童委員や保護司などとして地域の第一線で活動するなかで、松見地区社会福祉協議会の会長まで引き受けて、いつの間にか地域の顔になってしまった人です。ひと昔前ならどこにでもいた「お節介おばさん」的な存在のようですが、そのパワーには圧倒されます。どうやらそのパワーの源は、愛着のある地域(松見町)に貢献したいという思いのようです。そんな人柄に引きつけられるように地域の人たちをはじめスタッフも集まってきていると感じました。

ただ、一方ではその運営費をどうやって捻出しているのかが気になりました。単年度の助成金や補助金をいただいているようですが、持続可能性を考えると心配な点もあります。

そのひとつの答えとして、「ヨコハマ市民まち普請事業」に挑戦。この「まち普請事業」は、地域の課題解決や魅力向上のための施設整備に関する提案に対して支援・助成を行う横浜市独自の事業で一次通過団体は、二次コンテストに向けての活動助成金として最大30万円が交付され、二次を通過すると最大500万円の助成が受けられるという事業です。

そのコンテストで見事1位に輝き、500万円の助成を受けることができたそうです。膨大な提出書類やプレゼンテーション能力も必要となるこのコンテストを勝ち抜くためには、かなり専門的な能力が必要になると思われますが、7年間やってきた「てんこもりのわ」で繋がった人の輪や絆が生きたようです。この資金を元手に「キッチンの改修や玄関などのバリアフリー化をすることで継続的な事業が展開できる施設にしていきたい」そうです。

念願の施設改修にも手をつけることができ、今までよりも幅広い支援ができる見込みがつきましたが、これも単年度の助成金。お手伝いに来てくれている大学生からは、「クラウドファンディングで寄付金を集めては?」というアイディアも出されているそうです。

一方、社会福祉法人として補助金制度のなかで活動している私たち。

「福祉」という言葉は、とっても素敵な言葉ですが、その言葉に甘えていると「言われたことだけをやっていれば補助金がもらえる」という構造にも繋がります。平成28年改正社会福祉法において、社会福祉法人の公益性・非営利性を踏まえ、法人の本旨から導かれる本来の役割を明確化するため、「地域における公益的な取組」の実施に関する責務規定が創設されました。しかしながら、当初は戸惑いを隠せない法人も多かったように思われます。人材不足や人件費の高騰等、社会福祉法人を取り巻く環境にも厳しさがありますが、地域になくてはならない施設となるためにも、地域の福祉ニーズに対応するべく「地域における公益的な取組」を積極的に行っていく必要があると思います。そのひとつのヒントがこの「てんこもりのわ」には、詰まっていると感じました。

今後の展開として、カフェや乳幼児の預かり、市の介護予防・生活支援サービス補助事業など、幅広い事業の展開を見据えているようですが、いずれは学習支援や、高齢の男性が参加できるような取り組みなども考えていらっしゃるようです。

私たちからみれば、決して盤石な経営状況とはいえない活動ですが、何をやるにも『楽しくやろうよ!』という意気込みで活動している加山さんなので、人との繋がりや支え合いによって必ず乗り越えていくだろうと思わずにはいられませんでした。そして、この活動に福祉の原点を見る思いでした。

お寺の託児所として開設された筆者が勤務する認定こども園も、開設当時は園名よりも大きな看板に「ドナタデモオイデクダサイ」と掲げていたそうです。その思いは、70年以上たった今でも受け継がれていますが、いつの時代にも福祉の原点を忘れずに、地域に開かれた園、地域の人たちとつながり合う園の大切さをあらためて思うことができたインタビューでした。

写真:同じ座卓で勉強する子どもと、工作する二人の子ども

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